・・・・・・・いっそ狂ってしまえたら、と、どれほど願っただろう
君のことを想わずにいられる日が来ることなど、命ある限り来ることはないことを知っていたのに
知っていたのに・・・・・
それでも、この重い己の気持ちから逃げてしまいたくて、君に疎まれる日が来ることが怖くて
そして、自分から
そして、自分から
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全てを破壊した
NAMI no
HANA
朝の陽射が花道を照らし、それが心地よくて、まだ、そのまどろみから出たくなかったのだけれど、花道は普通のこの世代の子達がしているようなことは出来なかった。
もう思い出すのも難しいぐらい・・・前に両親を突然に亡くし、残された姉と二人暮らしてきた。
8歳年の離れた姉にずっと、おんぶに抱っこをしてもらってきたから、少しでも自分にできることは、したいと思っている花道だった。
今日は日曜、だけど花道の朝食当番。
「姉ちゃんが起きねぇうちにやっちまわないと・・・」
そう言いつつ、日ごろ女としては激務である営業、それも女性初の管理職をを一所懸命こなしている姉を起こさないように、できるだけ音を立てないようにして支度をしようと花道がリビングに顔を出せば、そこにはすでに、日ごろより女らしい姿をした、いかにも出かけますというようなカッコをした姉がコーヒーを飲んでいたのだ。
「おはよ、姉ちゃん」
「おはよ花」
綺麗な顔で微笑む姉に花道は、物凄く嬉しく想った。
二人きりの姉妹で、家族。
そのエコ贔屓目で見た所為だけじゃなく、この姉は本当に綺麗だった。
そういう花道も小柄な姉とは全く違うタイプだが背が高く物凄い美人とうわさが高かったのだが、いかんせん本人にその自覚が全くないので、今、着ている服も、『ゴクセン』まっつあおのえんじの縦縞ジャージだったりしていた。
「今日はいつもと毛色が違う服を着てんな?」
いつものようにお味噌汁を作りながら、花道が問いかけると
「ん?」
照れたような声に花道が振りかえると
「わッ!!」
姉がすぐ後ろに立っていて、花道は驚き、持っていた包丁を落としそうになってしまった。
「あ、あぶねぇぇぇぇ。」
「ご・ごめんなさい。驚かすつもりはなかったの」
慌てて包丁を拾う姉に
「気にすんな、ねーちゃん」
誰もが見惚れるような微笑を花道は見せた。
花道は自分の所為で誰かの表情が曇ってしまうことは嫌だった。
それが最愛の姉など以ての外
「この運動神経抜群の俺様がケガなんかするわけねーだろ?」
”ねーちゃんと一緒にすんなよ?”
とおどけて見せる花道に姉はようやく、花道が大好きな笑みを見せてくれた。
「ありがとう花道」
自分より背の高い花道を穂花(ほのか)は抱きしめながら言う。
世間では自分が花道を支えてきたように言われているけれど、実際、金銭的なものは穂花であっても精神的なものはは8つも下の花道が穂花を支えてきたのだ。
穂花にとって花道は太陽のような存在なのだ。
「いきなりなんだ?」
「ん・・・?あんたが妹でよかったと思ってね」
「今ごろ気づいたんか?」
花道が綺麗な顔でけらけら笑うとそれにつられるように穂花も笑うのだった。
朝食を終えた二人はソファに座り、花道お手製のカプチーノを飲んでいる。
『おかしい・・・・・ねぇちゃん落ちつきがねえな・・・』
ズズズ・・・とコーヒーを飲みながら花道はカップ越しに姉を見ると見れば見るほど、姉の方が花道をうかがっているように見える。
姉の方から切り出させてやろうと思い、花道は黙っていたのだが、カップの中身もなくなり、どうやら、姉は花道の出方を待っているように見え、花道は一つ息を吐くと
「なぁ、ねーちゃん」
「な・何?」
『ワザとらしい・・・・アヤシイ』
何て思っていることなど、姉に知られないように花道は、いつものようなトーンで
「俺に何か言いたいことあんじゃねーの?」
その言葉に姉の動きが止まる。
どうやら、ビンゴらしい
もじもじとして、しきりにブラウスの裾をさわり、落ち着きがない。
「あのね」
意を決したのか穂花は花道の琥珀の目を見据え
「花道に紹介したい人がいるの」
「俺に?」
「そう、(ゴクリ)結婚したい人がいるの」
「ふーん、結婚。・・・・・・・・・・・・・・・・・・結婚ッ!!!?? 」
立ちあがって驚く花道に穂花はクスクスと笑った。
「そんなに驚かないでよ。」
「だって、ねーちゃんが結婚するって言うから」
「失礼な子ね?」
言葉に反して、優しい声の穂花
「花道が驚くのも無理はないと思うのよ?」
「そーだろ?いつも日曜もいるじゃねーか?」
ほんとうに穂花は日曜すら、出かけていた様子がなかったので、花道は素直に言葉にする。
だが、穂花は微笑を見せるだけ
「仕方がなかったの、彼は忙しい人だから、夜だけ会ってたの」
「ふーん。で、どんな人だ?」
姉が惚れるなら良い人だろうと決め付けている花道に穂花はまた微笑む
「仙道 彰さんていって、私の上司で、まだ、30代なのに専務なのよなの」
「へぇー仙道さんか・・・ねーちゃんの上司なんか・・・」
花道にとって役職など、どうでもいいようで、姉の上司ということがとても気に入ったらしい。
「上司さんだったら、ねーちゃんのことよくわかっているもんな」
姉がどんなに頑張って、今の仕事をしているかわかる人なら、姉は幸せになるだろうと花道は思った。姉が懸けているものを否定しないだろう。
「1度会わせてくれよな?式の前に」
「ええ、もちろん」
まるで自分のことのように喜んでくれる花道に穂花もまた嬉しくて嬉しくて、こんな妹をもってよかったと心の底から思うのだった。
「さっそくだけど、もうじき彼くるから、よろしくね?」
「へ?」
いきなりの爆弾的な言葉に花道は目をパチクリする。
「彼珍しく今日休みがとれたんだって、ちょうど良いから、花道に会ってもらおうと思ってね、呼んであるの」
「・・・・・・・・・・いきなり過ぎだ」
花道は己の姿を見下ろしながらトホホと笑う
こんな格好で姉の好きな人に会うわけにいくまい、姉に恥をかかせたくない。
そう思った花道は
「・・・・・・・・着替えてくる」
「そうこなくっちゃね!」
ちゃっちゃとね〜と鼻歌混じりにご機嫌な穂花に花道は肩をがっくり落としそうになった。
だが、花道の顔は相変わらず綺麗な微笑を浮かべている。
姉が幸せになってくれることが花道の願いなのだから・・・
『仙道さんに会った後、部屋を探しに行こうっと』、ここは両親が残した家、姉が残りのローンを払いきった。
だからココは姉が住む方が相応しい。
『1Kでも、なんでもいいもんな♪』
そう花道が思っていると
「あっそうだ花」
「ん〜何ィ?」
「アンタが結婚するまで、この家にいてよね?」
「何ッ?ねーちゃん何バカなこと言ってんだ?新婚さんと一緒に住めるわけね−じゃん」
冗談もたいがいにしろよなぁと呟き、振り向くと、真剣な顔をした姉の顔がそこにあった。
「冗談でも、バカなことでもないわ花」
「・・・」
「私は父さん母さんにアンタを一人前にするように頼まれたの。私にとってアンタが一人前って言うのはアンタを本当に託せる人に渡すことなの」
「・・・・・・・・ねーちゃん」
「ね?だから、よけいな気をつかうんじゃないのよ?ここはアンタの家でもあるんだから」
花道の背をバンバン叩きながら、リビングに戻る穂花に視線を送りながら花道は、あれだけ言われても何故か素直に受け入れてはいけないような気がして、仕方がなかった。
「ごめん。ねーちゃん、やっぱり俺は家をでるよ?」
本当なら、仙道 彰に会ってもいけないような気がしている。
だが、会わないわけにはいかない。
姉の幸せの為に・・・
大好きな穂花にわびながら、決して聞こえないよな声で花道は呟いた。
2005/2/5
はじめてやった、昼メロのような仙花ぁ
ドロドロしちゃう
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